若月圭太のアニメ映画感想ブログ

劇場版アニメ・アニメーション映画の感想を中心としたブログ

ラストの選択を今後の彼らは採り得るのだろうか 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』感想

 京都アニメーションとはどのようなアニメーションをつくっている会社なのか興味ある方には本作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』をおすすめします。

 本作の評価は前半に限れば本年に公開されたアニメーション映画の中でもトップクラスの出来、前半よりはやや落ちる後半を加えた全体の評価でも本年屈指の出来と言ってもよいでしょう。

 本作はテレビアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の番外編として製作されていますが、話としては完全に独立したエピソードを取り扱っており、完全初見の方でも問題なく話についていくことができます。

 なお、シリーズ初見の方は勘違いしがちですが、作中の「自動手記人形」および「ドール」は差出人に代わって手紙や書類を代筆する、いわゆる代書屋の職業を指す言葉であり、ヴァイオレットは人形ではなくれっきとした人間です。

 

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完成度の高い前半部分

 本作は外部とは隔絶された女学校におけるヴァイオレット・エヴァーガーデンとイザベラ・ヨークの交流を描いた前半部分と、その数年後、ヴァイオレットを頼ってライデンのC.H郵便社を訪れたテイラー・バートレットの物語を描いた後半部分に分けられます。

 前半、女学校にイザベラの侍女兼教育係として訪れたヴァイオレット、最初イザベラはヴァイオレットを拒絶するも、徐々に打ち解けていく様子が京都アニメーションらしい繊細な日常芝居のアニメーション、光を効果的に用いた演出と共に描かれます。

 そしてデビュタント、ヴィオレットとイザベラの華やかなダンスが披露され、その夜、イザベラは彼女が捨てたテイラーとの二人で過ごした過去について語られます。

 そこでヴァイオレットの提案でイザベラはテイラーに対しての手紙を書き、その手紙は同僚のベネディクトによってテイラーへと渡される。そこに書かれていた内容とはというところまでが前半部分、正直、ここで話が終わっても問題ないほど高い完成度に仕上がっています。

やや蛇足気味な後半

 後半は前半から数年たち、孤児院を抜け出してヴァイオレットのもとを訪れたテイラーがC.H郵便社で郵便配達人の見習いをする様子が描かれます。

 おそらくテイラーのエピソードだけだと間がもたないと判断されたのか、並行してやや仕事に対する情熱を失いかけていたベネディクトがテイラーの来訪を機に仕事への情熱を取り戻す様子が描かれているのですが、結果としてテイラーとヴァイオレットの関係性の描写が薄くなっているうえ、クライマックスシーンに主人公が登場しないといった構成の問題が気になりました。

 また、前半が閉鎖的な女学校、後半が南方の大都市ライデンをそれぞれ舞台にしているにも関わらず、印象としては後半の方が地味な印象を受けます。例えば、前半のデビュタントのダンスシーンと対応する形で、後半ではライデンの祭りで情熱的な庶民の踊りのシーンを出すなど、何かしらの見せ場があれば良かったように思います。

ラストについて思ったこと

 ラストでテイラーはある選択をするわけです。この選択、テイラーの年齢を考えるとやや無理があるのではないかという気もします。ただ、戦後の新時代に夢と希望に満ちた彼女が、将来に対して確固とした自信を持つものでなくてはできないあの選択をすること自体にはそれほどの違和感はありません。

 問題は、これを作ったスタッフ側です。制作当時であれば彼らもこの選択を自信をもって採り得たでしょう。ただ、仮に今この作品を制作する場合に、彼らは同様にテイラーにあの選択を採らせることができるだろうかという懸念を抱かざるを得ませんでした。

 今後、京都アニメーションの行く手には想像以上の困難が待ち構えているのでしょう。わたしができることはこうして彼らの作品を観ることと、ブログで彼らの作品を紹介することぐらいしかできませんが、今後も彼らが作品を私たちに届けてくれることを信じて応援していきます。

作品紹介・あらすじ

 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、暁佳奈によるライトノベルを原作とするアニメシリーズで、テレビアニメが1期製作されています。

 本作『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-』は、本シリーズ初の劇場版となります。

 制作会社は京都アニメーション。テレビシリーズのシリーズ演出を務めた藤田春香が本作で初の監督を務めています。また、『リズと青い鳥』の吉田玲子がシリーズ構成を、高瀬亜貴子がキャラクターデザイン・総作画監督をテレビシリーズから引き続き担当しています。ヨークを寿美菜子、テイラー・バートレットを悠木碧が担当しています。

 ヴァイオレットはドロッセル王家の依頼で良家の子女が集まる全寮制の女学校に、ヨーク家の令嬢イザベラのもとに三か月後のデビュタント(社交界デビュー)に向けた教育係兼侍女として派遣される。実はイザベラには捨て去った名前と過去があった。

 その3年後、ヴァイオレットのもとへテイラー・バートレットと名乗る少女が訪れる。

 

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