- 作者: 有沢ゆう希,日野晃博,レベルファイブ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/08/27
- メディア: 単行本
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日本のアニメーション映画において剣と魔法の王道ファンタジーは鬼門といっても良いジャンルで、これまでに多くの作品が公開されては特に話題になることもなく消えていくということを繰り返しています。
本作についても同様の状況に陥りつつあります。どうしてこのようなことが繰り返されるのでしょうか。
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洋風ファンタジーで世界観を売りにするのはやめたほうが良い
現在公開中の『映画 この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』等に代表される、近年の小説投稿サイト等で人気の異世界転生・転移小説に登場する、レベル制を始めとするRPG等のゲームシステムや冒険者ギルドの存在する、ある種テンプレート的な洋風ファンタジー世界のことをナーロッパというそうです。
こういった世界の描き方については揶揄する声も多いのですが、必ずしも世界観がその作品の売りではない作品において作品の根幹にかかわる部分以外については読者が共通認識をもつナーロッパに準ずるとすることで本来の作品の売りに特化した作品を作りやすくなるといった効果が見込まれます。
一方で、アニメーション映画が洋風ファンタジーを手掛ける場合、予告等において不思議な世界であることを売りにしたプロモーションがとられることが多いのですが、このジャンルは古今東西、多くの方が様々な世界を提示してきたジャンルです。残念ながら今更斬新かつ魅力的な世界観を打ち出すのは極めて困難で、大半の作品が既存作品の劣化版にしか見えないのが実情です。
本作についても例外ではありません。本作はゲーム『二ノ国』シリーズと同じ世界を舞台をしています。そのため本作の舞台である「二ノ国」はかなり王道の剣と魔法の世界として描かれています。もしも『二ノ国』シリーズがドラクエ並みの知名度をほこる作品であれば、それでも良かったのかもしれませんが、本作レベルの知名度であれば劣化ドラクエとしてしか見られないのが正直なところです。
映画『二ノ国』本編映像(バトル編)【HD】2019年8月23日(金)公開
さらにいえば上記の動画を見ても分かる通り、本作のセンスはかなり古臭く、ありていに言えばかなりダサいと言わざるを得ません。
脚本・構成の問題
本作では、「二ノ国」には現実世界(一ノ国)と命が繋がっているもう一人の自分が存在するという設定が存在します。中盤以降、ユウはコトナを救うためには命の繋がったアーシャを助けなくてはならないとの考えのもとに行動しているのに対し、ハルはコトナの命を助けるためには、アーシャを殺さなければならないと考え行動することになります。
本作の脚本の問題は、ユウがこれまでに起こったことから命の繋がった人間は一方が死ぬともう一方も死ぬと推測し、それをハルに伝えているにも関わらず、ハルがそれを信じずにアーシャを殺そうとしているため、ハルが馬鹿にしか見えないことです。
今回のような展開をするのであれば、せめて中盤ぐらいまではハルの推測が正しいとミスリードしておいて、終盤でユウが本当はコトナとアーシャの両方を助けなくてはならないと気づくといった展開にすべきでしょう。
また、演出についても、それなりに著名な方が多数含まれている割には作品全体を通じて凡庸な演出に留まっており、全体的になぜ企画したんだろうとの疑問が晴れない作品でした。
作品紹介・あらすじ
映画『二ノ国』は、レベルファイブのRPGで知られる『二ノ国』シリーズ初の劇場版アニメーションです。
監督はゲーム『二ノ国』シリーズのアニメーションパート監督や『ギブリーズ episode2』の監督を務めた百瀬義文、脚本はレベルファイブ代表取締役社長の日野晃博が担当しています。また、キャラクターデザインを『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』総作画監督の西谷泰史が担当しています。
声優は主人公のユウを山崎賢人、ハルを新田真剣佑、コトナとアーシャ姫を永野芽郁が担当しています。
ユウと親友のハル、ハルの恋人のコトナは幼馴染。ある日コトナが通り魔に刺された直後に、ユウとハルは不思議な世界に迷い込んでしまう。
その際に行方不明になったコトナを探す二人は、この世界の姫、アーシャがコトナとよく似ていることを知る。そこで二人はアーシャ姫がいる城に忍び込もうとするのだが・・・
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