米津玄師が主題歌を担当していることで話題となった本作は五十嵐大介による同名の漫画を原作とする長編アニメーション作品です。
本作を一言で言えば少女のひと夏の経験と成長を描いたものと言えるのですがとにかく極めて難解な作品であり、誰にでも勧められる作品とはいえません。以下の条件のいずれも当てはまらない方は見ない方が良いでしょう。
- 原作のファン
- 考えるな感じろ派の人
- 女子中学生とか好きな人
あらすじ
中学生の琉花は父が働く水族館でジュゴンに育てられた少年、海と出会う。その後同様にジュゴンに育てられた海の兄である空とも知り合う。交流を深める3人。一方、そのころ世界中の海では様々な異変が発生していた。
不気味さと美しさを備えた海の生物たち
本作の海の生物たちの描写はCGと手書き、両方使用されていますがとにかくすさまじいの一言です。この点に関してはあの「ファインディングニモ」シリーズを超えています。正直、海中の描写で本作を超える作品がでることはしばらくは無いのではないのだろうかというレベルです。
琉花、逆ハーレムを築く
中盤付近で行方不明になった空を探して琉花と海は南の地へ向かいます。そこにいたのは空と若き海洋学者アングラード、彼らは海辺で穏やかな時を過ごします。劇中で彼らの容姿について触れられることは無いのですが、パッと見た限りでは3人ともかなり整った顔立ちをしているように見えます。このあたりで筆者は考えました。この作品の過剰に哲学的な言動は実はカモフラージュで、実はこれらの一連の映像は少女がひと夏の経験を経て女性に変わることの隠喩ではないかと。
実際、この直後に琉花は空から口づけをされると同時にあるものを飲み込まされます。そしてそのあるものが終盤に〇〇のメタファーであると明言されています。
また、本作では主人公の琉花の子供から女性への発展途上の肢体を描くことにかなり力を入れています。先に書いたことを考えれば納得できます。
渡辺歩監督について
渡辺歩監督はシンエイ動画時代に中編映画の「帰ってきたドラえもん」や「のび太の結婚前夜」の監督をしていたころから注目していた監督です。当時のドラえもんとしては異質ともいえる繊細な日常芝居演出が記憶に残っています。
シンエイ動画退社後は「謎の彼女X」や「宇宙兄弟」などで注目をあびたものの、ここ数年は監督としての仕事はとぎれないものの、予算等のリソースに恵まれない作品を担当することも多く、いまいち伸び悩んでいる印象があります。残念ながら本作でもその印象が覆されることはありませんでした。
彼が向いている作品は本作のような全編通じて真面目な作品よりは、コメディからシリアスまでの振り幅の大きい作品の方が向いているように思えますし、キャラクターデザインについても「ドラえもん」や「団地ともお」のようなシンプルなキャラクターの方が彼の演出がより映えるのではないでしょうか。
次のチャンスがあるかはわかりませんが、もしもあるのであれば「謎の彼女X」の植芝理一さんデザインのキャラでオリジナルのラブコメとか観てみたいです。